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[コラム] プログラミング教育・学習に生成AIが与えるインパクトとは[2024/09/05]

生成AIを使ってプログラミング系の大学の単位を取る学生が大量発生?

皆さん、こんにちは。株式会社ナレッジエックスの中越です。

前回から生成AIに関連するコラムを始めさせていただきましたが、前回のコラムをアップした後で、こんなポストをXで目にしました。

※ 投稿者のアカウント名は非表示とさせていただきました。また、投稿者ご当人がリプライで投稿内容の誤植について言及されていたため、上記画像はあらかじめ誤植を修正したものになっております。

もちろんこの内容が全ての情報系大学の現場に当てはまるかはわかりませんが、当然、予想できた流れではあると思います。話題としては、誰もが身近に使える生成AI = ChatGPTが世に出てきたときからずっと言われていることではありますね。

当初は、難解な数式の答えを求めるとか、小論文の文章を書かせるとか、そういう使い方を目にすることが多かったような気がしますが、GitHub Copilotなどの台頭から、プログラムコード生成に生成AIが強いらしいということが知れ渡ってきて、上記のような流れとなってきているのかと思われます。

特に、単位取得のために選択している講義などであれば、私が学生でもそうしたかもしれないと思います。

知識を習得するための大学での学習と考えると、大変悩ましい問題ではありますが、同時に、IT企業の人事担当者の皆様にとっては、これは若干頭の痛い問題かもしれません。

「大学で~言語の講義を1年受けてきました」

などと経歴にあったとしても、その学生さんが本当にプログラムが書けるという担保条件が(今までもあまりなかったかもしれませんが、ますます)危ういものになってしまい、経歴を参考にして選考するというプロセスに影響が少なからずあると思われます。

プログラミング系研修・教育の現状

では、これをうけて、我々が考えるべきこと、すべきこととは何でしょうか。

「学習過程においては、生成AIの利用を禁止する」のような脊髄反射的な対応がまず最初に思い浮かぶかもしれません。現状、暫定的にそのように対応している研修・教育現場も多いことかと思います。

ですが、現状、アカウント無しでWindows上からCopilotのような生成AIが簡単に、それほど制限なく使えてしまうような環境下で、生成AIの利用を完全にシャットアウトするのは、企業などである程度IT環境がコントロール可能なところであればともかく、プライベートでの機器利用までを踏まえた場合、現実的に考えてまず無理と言わざるを得ないでしょう。

そもそも、従来の教育、研修教材(特にプログラミング系)は、当然ながら生成AIを利用することを前提にはしていません。

例えば、プログラミングの研修であれば、何をもって「一定程度理解した」とみなすかといえば、最終的には指示された仕様に基づいたプログラムが独力で書けるかどうか、になってきます。

この「指示された通りのプログラムが書けるかどうか」については、現状の生成AIはかなりのところまでできてしまいそうだ、というのが、前回のコラムでご報告した内容です。

[コラム]生成AIは弊社研修の演習課題をどれくらい解けるのか[2024/08/05]

つまり、従来の教育、研修教材では生成AIの助力を借りれば、本人が理解していなくても修了したことになってしまう可能性が高いというわけです。

プログラム開発現場のニーズ

ここで「研修」といっているものを特に新入社員研修に限定すれば、「研修」のあとには現場で実際の業務に配属されることになります。

その配属先の実際の開発現場においては、生成AIの利用はどの程度浸透しているのでしょうか。

三菱総合研究所が行った調査[^出典1]によれば、生成AIを利用していると回答した企業の約30%が「プログラミング」での活用をしている、してみたいと回答しており、現場の関心、ニーズが高いことが伺えます。

実際に開発の効率化、開発生産性の向上が見込めるのであれば、当然企業としては積極的に生成AIを活用していきたいと考えるでしょう。

大手開発ベンダーの中には、具体的に生成AIを活用して30%以上の開発効率アップを目指すといった目標を掲げているところもあります。

生成AIがそこにある時代の教育・研修のあり方

そういった状況の中で、教育・研修のフェーズだけが生成AIを半ばタブー視して旧態依然とした研修のやり方を続けていて本当に良いのでしょうか。

これについては、2つの視点があると思われます。

現場との乖離の問題

1つは、現場との乖離の問題です。

研修フェーズの中で生成AIについて何も触れないまま、研修終了後にそのまま現場に社員を送り込むと、実際に生成AIを活用している現場のニーズと乖離してしまい、受講者がギャップを感じることになるかもしれません。

学習の段階ではある程度抑制的に生成AIを使う必要があったとしても、実際の現場では生成AIであろうが、他のツールであろうが、生産性を向上させつつ品質の良い成果物が得られれば良いわけですから、むしろ積極的に利活用している可能性が高いでしょう。2024年現在はそこまでではなかったとしても、来年の今頃はどうなっているかわかりません。

より良い研修効果を得るための問題

もう1つは、より良い研修効果を得るための問題です。

実際、2024年度の研修で弊社が見聞きした範囲でも、生成AIの利用可否や是非について、公式には何も言及することなく進行した(=生成AIが存在しないかのような態度で研修を進めた)現場も少なからずあったのではないかと思います。

そのような姿勢では、上記でも言及したように「従来の教育、研修教材では生成AIの助力を借りれば、本人が理解していなくても修了したことになってしまう可能性が高い」ですから、本当に受講者の知識習得に繋がっているかといわれれば、やはりNoと言わざるを得ないでしょう。

生成AIを活用して、どのように知識を効率よく習得するか。
知識はしっかりと身に付けつつも、アウトプットは生成AIを活用して高いスループットで行えるようにするにはどうするか。

といった方法を考えていかなくてはなりません。

まとめ

生成AIの登場により、プログラミング教育・学習の在り方が大きく変化しつつあります。大学での単位取得や企業研修において、生成AIを使って簡単にプログラムを作成できるようになったため、従来の教育・評価方法では真の理解度を測ることが難しくなっています。一方で、実際の開発現場では生成AIの活用が進んでおり、教育現場と実務の間に乖離が生じる可能性があります。

これらの課題に対応するためには、生成AIの利用を単に禁止するのではなく、むしろ積極的に活用する方法を模索する必要があります。具体的には、生成AIを使いながら効率的に知識を習得する方法や、基本的な理解を深めつつ生成AIでアウトプットの質を高める技術を身につけるなど、新しい教育・研修のアプローチが求められています。

以上


[^出典1]: 生成AIコラム | 第4部 生成AI時代のシステム開発 第1回:「システム開発プロセスにおける生成AIの活用動向」 ~生成AIの活用から見えるシステム開発業界の変革の兆し~ | 三菱総研のDX デジタルトランスフォーメーション
https://dx.mri.co.jp/generative-ai/column/system-development-01/

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